荷物が壊れた!なくなった!
引越し業者に弁償してもらえる?
業者のスタッフが荷物を落として壊しました。ハイすいませんでした、では済みませんよね!引越し作業中に荷物や建物が破損した場合、よっぽどのことがない限り、業者は依頼主に損害賠償をしなくてはなりません。
それは国土交通省が定めた「標準引越運送約款」にも書かれています。守らない業者はモグリです。
荷物や家屋の破損はよくある
国民生活センターには、引越しをめぐる苦情が毎年2,000件以上寄せられています。中でも多いのが荷物や家に傷を付けられたというもの。
トラブルになりやすい荷物の種類は、タンスやテーブルなどの大型家具や冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が目立ちます。また、それらの荷物を運ぶ際に養生が不十分で廊下や壁に傷がついたといった相談も。
<引越しの際のトラブル例>
- 引越しの際、トラックの助手席でテレビが運ばれ、液晶画面に傷がついた
- 引越し作業中、作業員が無断で組み立て式の家具を分解し、再組立できなくなった
- 事業者が養生せずに冷蔵庫の2階に上げようとしたため階段の一部や床に傷がついた
- 業者が無理に詰め込んで梱包をしたため、バッグや靴に折り目や傷がついた
- 水漏れにより、購入したばかりのパソコンと空気清浄機、電気スタンドが壊れた
トラブルにあった人のうちわざわざ国民生活センターに訴える人はそう多くはないでしょうから、実際にはもっと高い確率で傷や破損のトラブルに遭う可能性があります。
ただでさえ忙しい時にこういう面倒なことって本当に困りますよね。
でももし損害賠償って話になったら、どんな風に、どんな流れで弁償してもらえるのでしょうか?
原則は「修理」で弁償、修理が不可能ならお金で
引越し業者は基本的に、次のいずれかの方法で弁償にあたってくれます。
- 修理できそうなら修理をする、もしくは修理代を払う
- 似たような代替品と交換する
- お金で補償する
タンスなどの大型家具や建物の床や壁への傷や破損といった損害には、修理や補修で対応してもらえます。直せるようならお金ではなく直すことで弁償してくれるのです。
自社の修理スタッフを派遣してくれる場合や、業者を紹介してくれる場合、自分で修理業者を探して見積りを提出する場合があります。
修理が難しいと判断された場合は、同じような価格帯の代替品と交換となることもあります。3万円の収納棚であれば3万円の収納棚と。まったく同じ商品にしてもらえるとは限りません。また、家族の思い出の品といった付加価値分は考慮されません。あくまでの市場価格で判断されます。
業者としては修理または現物で対応したいというのが本音のようですが、どうしてもという場合はお金で解決ということになります。
これがまたややこしいのですが、例えば買った時は10万円した冷蔵庫でも、引越し時点では数年たっており2万円の価値しかないと評価されれば、支払われるのは2万円です。
金額は業者と交渉によって決まるのですが、あちらは低くおさえたい、こちらは多めにもらいたいということで、納得のいく金額になるとは限らないので注意しましょう。
こんな時は損害賠償の対象にならない
引越し業者が必ず守らなければならない「標準引越運送約款」には、次のような文章があります。
第九章 責任
(責任と挙証等)
第二十二条 当店は、荷物の受取(荷造りを含む。)から引渡し(開梱を含む。)までの間にその荷物その他のものが滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は荷物が遅延したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。引用・標準引越運送約款
つまり、よっぽど業者に非がないことを証明できない限り、「速やかに賠償」してもらえる、とあります。では、「よっぽど」とはどのようなシチュエーションなのでしょうか。
同じく「標準引越運送約款」には、業者が責任を取らなくて良いケースとして以下のようなものが挙げられています。
- 荷物の欠陥や自然な消耗
- 荷物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびなど
- ストライキもしくはサボタージュ、社会的騒擾その他の事変又は強盗
- 不可抗力による火災
- 予見できない異常な交通障害
- 地震、津波、洪水、暴風雨、地すべり、山崩れその 他の天災
- 法令又は公権力の発動による運送の差止め、開封、没収、差押え又は第三者への引渡し
- 引越を依頼した側の故意又は過失
依頼主の荷造りが雑だった場合や、事故や火災・災害など予期できない出来事が原因で荷物が破損した場合は、残念ですが弁償してもらえません。
業者の不注意ではないからです。警察に没収されたら補償対象外というのは面白いですね!
破損はないけどパソコンが動かないときは?
他にも、荷物の種類によっては補償してもらえないことがあります。たとえば引越し業者が運搬を拒否できると規定されているものに関しては、たとえ業者の過失でダメになっても賠償請求することができません。
たとえば以下のようなものはそもそも引越しの際に運んでもらえません。
- 現金、預金通帳
- 有価証券(株式等)
- 宝石貴金属類
- 動植物
- 火薬類
- 壊れやすいもの
貴重品は事前に申告してあれば対象になりますが、あまりにも高価な場合は断られるか、個別に保険をかけることを勧められます。
壊れやすいものといえばパソコンやタブレットですが、家電の一種ということで運んでもらえないわけではありません。ただし専用の梱包材を使うなどして厳重に梱包し、何が入っているか目立つように表記しておきましょう。できれば自分で運ぶのが安心です。
パソコンに関しては、電源が入らなかったりデータが飛んでしまっていたりしても、外傷がなければ補償対象外であることに注意しましょう。
引越しのせいで壊れてしまったのか、依頼者の設定が悪かったからなのか、証明のしようがないからです。データのバックアップは必須ですね。
3ヵ月以内に申し出ないと無効
引越し業者は「運送業者貨物賠償責任保険」という保険に加入していて、業者の責任で賠償が発生した場合この保険から支払われます。したがって、もしもの時は遠慮せずに請求しましょう。
引越しの際に気づかなかったことでも、後日引越し業者に申告すれば修理や弁償に対応してもらえます。ただし、「標準引越運送約款」にもあるように時効までは3ヵ月しかありません。それを過ぎればたとえ業者のミスでも補償はしてもらえなくなります。
引越しが多い家庭ではダンボールを開梱する前に次の引越しが来ることが少なくないと聞きます。しかし引っ越しが終わればとりあえずダンボールはすべて開け、家具や家屋に大きな傷がないか、家電は問題なく動くか確認しましょう。
保障内容についてどうしても納得がいかない場合は、国民生活センターに相談してみても良いかも知れません。