今の日本は昔より暑くなっている?
気象庁のデータから気温差を検証
ちなです。
9月に入ってもまだまだ暑いですね。個人の感想ですが、夏がどんどん暑くなってきている気がします。
令和に入ってから8月までの間に、熱中症で救急搬送された人の数は、7月だけで16,431人、8月中に4万人を超える見込みです。ヤバイですよねこれ。こんな状況なのに、「最近の若者は軟弱になった」「学校にエアコンなんかいらない」「ワシらの若い頃は」なんてことを言う人がいます。
「今と昔じゃ暑さのレベルが違うよ!」
と反論したいところですが、エビデンスの無いことは口にできません。そこで、今は昔よりも本当に暑くなっているのか、気象庁や環境省その他省庁が発表しているデータをもとに検証してみました。
目次
実際の気温は昔より高くなっているのか
関係各省庁がまとめた『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~』にその答えが明確に載っていました。この資料によると、世界の年平均気温は19世紀後半以降100年あたり0.72℃ずつ上昇している、とあります。
えっ、たったそれだけ?
1℃に満たないなんて、温暖化も大したことじゃないと思ってしまいますが、これは地球全体の話であって、どこの地域も同じように変化しているわけではありません。気温上昇率が大きい北半球の中緯度に位置する日本は影響を受けやすく、この100年で1.2℃暑くなっています。
特に東京などの大都市はヒートアイランド現象による気温上昇により平均気温がこの100 年あたりで3.2℃上昇しています。地球温暖化は温室効果ガスの増加と自然変動が重なったために起こるとされていますが、身近な気温は都市化の影響のほうが大きそうですね。
昔と比べて日本は暑くなっているのは本当だった!
日本は世界の中でも特に気温上昇が大きく、都市化が進んだ地域ほど平均気温が高く推移しているということですね。下のグラフを見ても、日本は長期的に気温が上昇傾向にあって、特に1990年以降の変動が激しいことが分かります。
災害が増えたと感じるのはなぜか
昔と比べて災害が増えたという声もあります。「異常気象」という言葉もよく耳にしますね。私達がそんな風に感じるようになったのはなぜなのでしょうか。
日本の気候変動の特徴として、真夏日や猛暑日が増えている点があります。東京周辺で30℃以上となる時間数は、1980 年代前半には年間200 時間程度でしたが、2000年に入ると約2倍になっています。さらに、その範囲は東京からどんどん郊外へと広がっています。
極端に暑い日が増えてるってことね。
これだけ気温に変化があると天候にも影響して、雨が降る日は減っているのに豪雨になる回数が増えているとデータにあります。しとしと降る日は減っているのに、1時間降水量50mm以上の短時間強雨(滝のように降る雨)の発生回数が増加しているのです。大雨が増えれば、洪水や土砂崩れなどの災害も増加することが考えられます。
降れば土砂降り!
夏の話ではありませんが、私の知る限りでは「この場所はこのくらいは雪が積もるもの」というところに全然雪が見られなくなった経験が増えてきたように思います。データでは、積雪量が減少した地域が増えている一方で、北海道や本州の一部の内陸部では大雪になる予測が報告されています。
雪不足でスキー場の閉鎖が続いているのに、降るところではドカ雪…
物議をかもした甲子園の「暑さに耐えるのも教育」発言
甲子園は今年で101回目を迎えました。100年以上やっていれば気候もずいぶん変わっているでしょうが、相変わらず甲子園は真夏の炎天下でやっています。
今年も高校生が素晴らしいプレーを見せてくれて、私も決勝まで楽しく観戦しました。一方で、「この猛暑の炎天下でやる必要ある?」「ドームじゃダメなの?」と思わずにいられませんでした。
高校野球は磨かれた懸命なプレーが感動的なのであって、才能ある若い人が苦しい思いをすればするほど、エアコン付きの部屋で見物する大人が盛り上がるって、よく考えたらちょっとひどすぎませんか
あるテレビ番組では、甲子園優勝校の元監督が「(暑さに)耐えることが教育」「鍛えてたら死にません」と発言したことが話題となりました。ザ・根性論って感じですが、こういう考え方の人って少なくないと思います。
「教育」って子供を危険にさらすことじゃないと思うなー
甲子園側も何もしていないわけではないです。暑さ対策として以下のような取り組みをおこなっています。
- 選手の控えベンチや酢安どの通路にクーラー(送風機?)
- アルプススタンドの床や階段に遮熱効果のある塗装
- 決勝前に1日だけ休養日を設ける
- ところどころにミストを噴霧する機械を設置
- 高野連が不足分のスポーツドリンクや水を用意
- 冷やしたペットボトルで手を冷やすよう推奨
優しいところあるじゃないと思わせる一方で、絶対夏の甲子園でやるんだという執念のようなものを感じます。場所を変えたり、時期をずらしたりすることはしないんですね。
甲子園を観ていると、選手だけでなく応援に来る人も心配です。選手以上に暑さに慣れていないため、体調を悪くする人が毎回続出すると引率の人が言っていました。
屋根もないコンクリートのアルプス席で演奏している吹奏楽部とか応援団部とか、大丈夫なんでしょうか。攻守交代のタイミングで生徒たちに水のスプレーをふりかけて回っている先生がいました。優しいけど、どのくらい効果があるかは不明。
いろいろ対策してるけど、どれも根本的な解決策じゃないよね。
暑さ指数「厳重警戒」の中でおこなわれる日本のスポーツ
暑い中でスポーツをすることは健康に悪くはないのでしょうか。
夏の甲子園期間中の平均気温は29.3℃、平均最高気温は32.8℃、平均湿度70%です。湿度と風速を反映した体感温度は平均で33.7℃、最高で43.3℃なのだそうです。これは、日本スポーツ協会のスポーツ活動中の熱中症予防ガイドブックにおける「運動に関する指針」では、厳重警戒(激しい運動は中止)に該当します。
気温 (参考) | 暑さ指数 (WBGT) | 熱中症予防運動指針 | |
35℃以上 | 31℃以上 | 運動は原則中止 | 特別の場合以外は運動を中止する。 特に子どもの場合には中止すべき。 |
31~35℃ | 28~31℃ | 厳重警戒 (激しい運動は中止) | 熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。 10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。 暑さに弱い人※は運動を軽減または中止。 |
28~31℃ | 25~28℃ | 警戒 (積極的に休憩) | 熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。 激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。 |
24~28℃ | 21~25℃ | 注意 (積極的に水分補給) | 熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。 熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。 |
24℃未満 | 21℃未満 | ほぼ安全 (適宜水分補給) | 通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。 市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。 |
WBGT(湿球黒球温度)とは聞き慣れませんが、人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」および「風(気流)」の要素を取り入れた「暑さ指数」のことです。輻射熱とは、地面や建物・体から出る熱のことで、ビルやコンクリートの多いところはWBGTが高くなります。
WBGTがいちばん人が暑いと感じる指数を正確に表しているんだね。
同じ気温でも、風通しのいい高原にいるのと、湿度の高いビル街にいるのとでは、暑さの感じ方が全然違いますよね。暑さ指数が高い地域は都市部に集中しています。甲子園は街中にありますし人がいっぱい湿度もいっぱいでしょうから、WBGTは高めだと推測されます。日によっては運動は原則中止に該当するのではないでしょうか。
アマチュアスポーツを管轄する日本体育協会の指針をずーっと無視し続けている高野連すごい。
東京オリンピックに学ぶ暑さ対策
これだけ暑くなったら、スポーツをする人以外も何らかの対策をしないと健康を害してしまいそうです。熱中症対策については環境省が啓発ポスターやパンフレットをふんだんに作成してくれているので参考にしましょう。
心配なのは今年おこなわれる東京オリンピックです。この暑さの中、日本人でもバタバタ倒れている季節での開催、おもてなしの国としては何としても海外の皆さんに快適に日本の夏を過ごしてもらわなくてはなりません。政府や五輪委員会が考えたオリンピック期間中の画期的な暑さ対策は、私たちの生活にもきっと役に立つに違いないでしょう。
さて、その中身はというと…
東京オリンピックの画期的な暑さ対策
- 打ち水をする
- 首にぬれタオルを巻く
- 葦簀(よしず)や簾(すだれ)を使う
- クールシェア(エアコンの効いた公共施設で過ごす)
- サマータイムの導入
- 子供が育てた朝顔をならべる
画期的というより懐古的と言いましょうか、戦闘機に竹槍で挑む系ばっかりで本気で心配になります。意味がないとは言いませんが、もう少し根本的な解決策にはつながらないものでしょうか。。
体を鍛えることも大切だけど
途中からスポーツの方に向いてしまいましたが、とにかく日本が昔に比べて暑くなっているのは確かだということが分かりました。その原因は温室効果ガスと自然変動、あと都市部に関してはヒートアイランド現象の影響が大きいようです。今どきの人がひ弱になったせいでも、ニュースで取り上げられるからそんな気がするせいでもなかったんですね。
「昔は良かったおじさん」が暑さをごり押ししてきた際には、今と昔では気温や暑さ指数が全然違うことを突き付けてやってください。
私もあまりエアコンは好きではないし、子供がずっと空調の効いた家の中で遊ぶのには違和感があるよ。
どこまでが安全でどこからが危険か、ちゃんと分かっている人がみてくれていたらいいけどね。
適度に体を鍛えつつ、健康を害さないように気を遣うのって、けっこうさじ加減が難しいですね。