おせち料理は戦後からの文化だった!
おせちは作る?買う?

みなさん、今年はおせち料理を作りますか?
私は作りません。去年も一昨年も作ってないです。
なぜなら、家族が苦手な食べ物が多くて、ちっともおせち料理っぽくならないからです。

黒豆、数の子、栗きんとん、紅白なます、サトイモ、たたきごぼう、昆布巻きを入れずに、一体どんなおせち料理を作れと。

かまぼこと田作りは家族のうち2~3人は食べてくれます。筑前煮はみんないけるかな。イクラは子供が大好物です。でもそれだけではお重が埋まりませんね。よってお正月っぽいおかずは小皿に分けて出して、あとはお雑煮やお鍋をいただいています。

こんな話をすると、「今どきの嫁は」「昔の女性は全部手作りしていた」「おせちは昔からの日本の伝統なのに」という人が現れそうです。でも本当にそうなのでしょうか?調べてみました。

おせち料理は3/4の人が食べている

かまぼこでおなじみの紀文が2018年におこなった「紀文・お正月全国調査」によると、お正月におせち料理を食べた人の割合は全体の76.1%でした。4分の3の人が食べている計算ですね。




多いのか少ないのか迷うところですが、たとえば12月にクリスマスケーキを食べる人の割合は全体で73%(女性が80%・男性が65%)です。クリスマスケーキよりも高い割合でおせち料理が食べられているということは、やっぱり文化として定着しているということでしょうか。

自宅でおせち料理を用意する人の割合は、年齢に比例する傾向があります。60代の人は8割近くいますが、20代の人は3割程度しかいません。若い人は作らないけど誰かが用意したものを食べるということですね。

作っている人・買っている人の割合

おせち料理を食べた人が76.1%でも、76.1%の人が全員自分で作ったわけではありません。誰かが用意してくれたものを食べただけということもあり得ます。では用意した人のうち、手作りした人の割合はどのくらいでしょうか。

完全に手作りをしている家庭はごく少数

おせち料理ってどれも手間がかかって作るのは大変です。共働き家庭が増え、おせち以外の料理も増えている中で、どれだけの人が家庭で手作りをしているのでしょうか。

先ほどとはデータ元が変わりますが、リビング新聞グループがおこなった調査によると、去年2018年におせち料理を用意した人は56.8%とあります。


参考・リビングくらしHOW研究所「おせち料理についてのアンケート

おせち料理を用意した人のうち、完全に手作りをした人は7.6%にとどまります。栗きんとんや煮豆まで自分で作れるってすごいですよね。最も多いパターンは「ほぼ手作り&一部単品購入」または「一部手作り&ほぼ単品購入」する方法です。

手作りが多めの人と購入が多めの人を合わせた割合は66.4%にのぼります。手作りと単品購入を組み合わせる方法が、おせち料理を用意するもっともスタンダードは方法と言えそうですね。

自分で作れるものは作って、作れないものは個別に買う方法だね。

お重には詰めていないけど、お正月っぽい食品をいくつか購入はしているので、うちもこの多数派に当てはまりそうです。これが一番多いパターンであることは違和感ナシです。難しいものは美味しいものを買って安心したいし、こだわりたいものは自分で作りたいですしね。

一部購入する人は「かまぼこ」「数の子」「黒豆」を買っている

おせち料理を、作るものと買うものの混合にしている人は、どんな料理を作ってどんな料理を買っているのでしょうか?先ほどのリビング新聞グループの調査結果です。

<買うことが多いおせち料理>

  • かまぼこ
  • 黒豆
  • 伊達巻き
  • 数の子

<作ることが多いおせち料理>

  • お煮しめ・筑前煮
  • 紅白なます
  • 黒豆
  • 栗きんとん

さすがにかまぼこや数の子を手作りするのは無理があるようで、買う単品の中で断トツの上位となっています。逆に、お煮しめや筑前煮は自宅で作るのが定番のようですね。特に50代60代で作る派の人が多くなっています。栗きんとんも作りたい人が多いようです。

黒豆を買う人と作る人両方多いのはどういうことだろう?

おせち料理は地域や年代によってメニューが異なりますが、黒豆はどこを通じても定番で、作る人も買う人も多いということかなと推測できます。よく買われるおせち料理の単品は、スーパーのお正月コーナーの定番商品ですね。

おせちセットを買う人は2割

先ほどのグラフにありましたが、おせちセットを購入する人も増えています。通販やデパート、スーパーなどでよく見かけるお重に入ったおせち料理のセットですね。

ひと昔前はおせち料理を丸ごと買うなんてセレブか横着者というイメージがありましたが(主観)、今では当たり前になりつつある感じがします。

パンフレット見るだけでワクワクするよね。

色とりどりのおせち料理の写真を見ていると幸せな気分になりますが、つい気になるのがお値段です。いいなと思ったものはたいていいいお値段が付いています。おせちセットを購入する人はどのくらいの予算を考えているんでしょうか?



日経ビジネスの調べでは、5,000円以上1万円以内が最も多く、次に1万円以上1万5,000円以内と続くので、1万円前後が多いということですね。

これは3~4人で食べることを予定しているケースが多い。核家族1世帯分といったところで、昔のように親戚が大勢集まってわいわい食べるためのものではないことが分かります。

1人用や2人用のミニおせちも人気あるみたいだね!

「お母さんの手作りおせちが日本の伝統」は本当?

おせち料理は作らなければいけないってプレッシャーあると思うんですよ。特に女性は。そんな時お決まりのフレーズが「おせち料理は日本の伝統」です。

大昔からやらなければならないと決まっていることなら、たとえイヤでもやらなくてはいけないのか、そんな気分にさせられます。でも本当におせち料理は古くからの日本の伝統なのでしょうか?

おせち料理は思っていたよりも歴史が浅い

おせち料理について、紀文が興味深い資料をまとめています。

おせち料理の起源は奈良時代または平安時代の宮中行事だといわれていますが、それは私達が知っているおせち料理とはずいぶん違います。

天皇が祝の日に群臣を集めて酒食を賜る節会(せちえ)と呼ばれる儀式で、その祝の日の中に元日が含まれていることからおせち料理の起源とされていますが、ごく限られた身分の人達の、専門の料理人が作る、今とは全くメニューが違うのです。

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室町・安土桃山時代には武士を中心とする文化が栄え、「雑煮」が誕生します。

雑煮は儀礼・儀式において酒肴として発達し、正月にも出されましたが正月だけということではなかったようです。重箱もこの頃に登場します。

食べ物を入れてお弁当箱として使われ出すのは江戸時代のことで、祝い肴を入れるようにもなりました。

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だんだん現代のおせち料理と似てきた気もしますが、この時代にはまだ「おせち料理」という概念が存在しません。

おせちとは「煮しめ」のことを指し、正月料理はお重に積めるようになりましたが、神様に供えることが主な目的でした。

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明治時代から大正時代になると、鰊(にしん)の子、煮豆、昆布巻、田作(ごまめ)、たたきごぼう等を重箱に詰め、家族で食べたり年賀の客にもすすめたりしていたとの文献があります(東京風俗志)。

名称はおせちではなく「食積(くいつみ)」と呼ばれました。

とはいえ麦飯・イモ類・雑穀類が主食で白米が食べられるのは限られた人だけだった時代の話です。

地域ごとに独自の発達をとげたこともあり、日本全国で統一されたおせち料理のイメージはまだなかったようです。

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お重に色とりどりのごちそうを詰めたいわゆるおせち料理が全国化したのは第二次大戦後しばらくたってからです。

おせちの煮しめと祝肴の食積が一緒になり、テレビや婦人雑誌で全国に広まったことから、日本人に共通したおせち料理のイメージが定着化しました。時代的には団塊世代が大都市圏に移り住み核家族化が進んだ頃です。

とすれば、おせち料理をお母さんが作って家族で食べるという文化は、大昔から脈々と受け継がれてきた風習ではなかったんですね。

おせち料理の文化って割と最近できたのね!

それまでは限られた身分におけるバラバラの風習で、今の形に落ち着いたのは高度成長期。

じゃあ伝統だからお母さんが作りなさいっていうのはウソだったんじゃない…

「お母さんを家事炊事から解放するため」への疑問

おせち料理がなぜ存在するかの理由ついて、「お母さんに楽をさせるため」ってあるじゃないですか。これ、本当に納得がいきません。

だっておせち作ったところで全然楽じゃないですよ?

  • 何日も前からおせち計画づくり
  • 人ごみの中、納得のいかない値段の買い物
  • 作りなれないものをレシピ見ながら料理
  • 作ったものは全部お重に入らないので減ったら随時詰めなおし
  • お雑煮や生ものは毎食作る必要がある
  • 洗い物は少ないが全然ないわけではない
  • 丸3日9食もおせちにするわけにいかず、結局何か考えるはめに

確かに普段よりかはマシかもしれませんが、これで楽をさせてあげていると言われるとちょっとムッとします。本当にお母さんをお正月休ませてあげたいのなら、「母厨房に入らず」くらい徹底してほしいですね。

「買いたかったら買う、作りたかったら作る」でいい

おせち料理が不要と言いたいわけではないんですね。今後も続いてほしい習慣だと思っています。でも、間違った情報でしんどい思いをするのはなんか違うのかなと。お祝い事なので、用意する方も楽しい行事であってほしいんですね。

好きにしてもいいと気付いた

私は「正月とはこういうもの」という思い込みがあったので、頑張って3段重のおせち料理を作っていた時期がありました。子供ができたら買って来る単品の品数が増えましたが、一応続けていました。

でもさすがに疲れたなーと思った頃、夫から「子供はほとんど食べられないし、俺も好き嫌い多いから、無理して作らなくていい」と言われ、かれこれ10年ほどお重のおせち料理は作っていません。

「自分の好きなようにしてもいいんだ」ということに気付いた時は視野が広がりましたね。

みんなもそうして欲しいと思います。料理が得意な人にはおせち料理作りはきっと楽しいでしょうし、喜ばれるでしょう。おせち料理は食べたいけど自分が作ったものはちょっと…という場合は丸ごと買っちゃうのもアリですよね。最近では冷蔵のおせちがあったり、Youtuberのヒカキンが200万円のおせちを紹介したりして、本当にいろいろあって楽しいです。

  1. 買いたい人は買う。
  2. 作りたい人は作る。

「伝統だから」に縛られず、自由に選ぶのがいいですよね。

「独りおせち」にあこがれる

最近はひとり暮らしでもおせち料理を注文する人が増えているようですね。そういうジャンルも確立しています。これってすごく豊かなことだと思いませんか?お正月を家族で過ごす人も多いでしょうが、そういう家族がいない人だってたくさんいます。それでも新年を祝いたいって気持ち、大事じゃないですか。

私、将来夫に先立たれて子供が独立した1人暮らしのおばあちゃんになったら、自分だけのためのおせち料理を注文してみたいんです。ちょっと豪華なやつ(笑)。お母さんをやっていると、夫や子供の味覚に合わせて料理を作ったり買ったりするため、「自分のための料理」にはなかなかありつけません。

こたつに1人、おせち料理と自分、それで楽しいと思えるお正月なら、きっとそれまでの人生が最高にうまくいっていたってことですよね。あと何十年後でしょうか。楽しみです。

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  1. おせち料理は3/4の人が食べている
  2. 作っている人・買っている人の割合
  3. 「お母さんの手作りおせちが日本の伝統」は本当?
  4. 「買いたかったら買う、作りたかったら作る」でいい
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